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洗練されたジビエ料理 @LATURE

梅雨の湿気と夏の熱気が交わり、蒸し暑い季節となりました。

少し前のお話になりますが、4月下旬に飲食業界で働く人のための講習会に参加してきました。

前回のテリーヌの記事に続き、いわゆるプロ向けの料理講習会で、今回のテーマは「ジビエ」。

実をいうと、私は料理人でありながら、食には割と保守的なタイプです。

ジビエというジャンルは作るのも食べるのもあまり得意ではなく、最初にこの講義のお知らせが届いたときには「自分にとっては縁遠い分野」と思い、参加するつもりはありませんでした。

ですが、ふと「苦手な分野だからこそどんなものなのか一度ちゃんと目にした方がよいのかもしれない」と思い直したのです。

そして、青山の名店ラチュレの室田シェフの講義を拝聴する機会をいただきました。

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鹿のブラッドマカロン 
みなさんご存知のとおり、ブラッド=血です。
血には起泡性や熱凝固性があり、実は卵白に似た性質を持っています。
それを利用してつくったのがラチュレの代表的なアミューズ、ブラッドマカロンです。
びっくりするほどたっぷりの血を使用していますが、えぐみなどはなく、血がコクになっています。
可愛い見た目ですが、「血のマカロン」と聞くと、インパクトがありますよね。

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タルトジビエ
パテアンクルートをタルト型で成形した一品。 
何種類もの肉を使った奥深い味わいですが、食べるとシンプルに「美味しい。」と思う料理でした。
味をなじませる=寝かせることと、パイ生地の歯触りを維持すること。この2つを両立させるための絶妙なバランスにとても気を配っていらっしゃって、シェフの研究熱心な姿勢が垣間見えました。

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リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル
そして私にとっては最もハードルが高いと思われたこちらの料理。 
室田シェフのスペシャリテ・・・とはいっても、熟成に熟成を重ねた兎肉とたっぷりの血・・・。 
私に美味しさが分かるのだろうか・・・と不安に思いながら、一口。
え・・・!全然大丈夫・・・!というかむしろすごく美味しい!とびっくりしたのでした。
熟成させた兎肉自体は、お店の営業中には処理できないほど、かなり強烈な匂いになるようです。
でも、いただいたお料理にはまったく臭みはなく、血でとろみをつけたソースと相まって、とても濃厚で旨味があります。



調理法も大変勉強になりましたが、なにより味見させていただいたお料理が本当に美味しく感じられました。

苦手意識を持っている私が心から「美味しい」と思えたことに、私自身で驚きました。



でも、印象に残ったのは料理だけではありません。

私は、シェフご自身についてのお話にとても感銘を受けました。

「海外で修行したわけでも、有名店で働いたわけでもないけれど、ここまでやってこられました。 
努力を続けていれば、必ず実を結ぶと思います。」 

ということをご自分の体験として話してくださったことが深く印象に残ってます。

私自身、もともと全く違う世界で仕事をしていて転職した身で、海外での経験も有名店での経験もありません。 

30代半ばになり、これからのキャリアをどう築いていくべきか悩んでいる時期でしたので、とても励まされる思いでした。



また、ブラックと言われる飲食業界でのこれからの働き方についてもお話をされていました。

ただ料理を最優先にいくらでも時間と労力を費やして働くというスタイルはこれからの時代にはそぐわない。

限られた時間と人手の中で、いかに納得できる料理を提供するか。

そして、オーナーシェフとして、共に働くスタッフのモチベーションを高く維持するために、どんなことができるか。

「働く」ということについて、とても現実的に考えていらっしゃることに深く共感しました。



単に調理法を勉強する目的で参加して、これほどに感銘を受けることになるとは思ってもいませんでした。

ご縁があって室田シェフのお話を聴くことができ、とても感謝しています。



すっかり感動してしまった私は、翌日、すぐに同僚にその話をしました。
そしたら、彼女も室田シェフの料理を食べてみたいということで、さっそく5月上旬に二人で予約。
6,800円のランチコースをいただきました。

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講習で教えていただいたブラッドマカロン。
本物の毛皮を使用した可愛らしいディスプレイとともに提供されます。
この毛皮は、なんと、スタッフさんがカットしているとのこと!

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猪肉を使った一口サイズのパイ。
小さいながらも、肉と脂身の旨味を味わえます。

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軽くグリルした鯵とホワイトアスパラガス。
脂の乗った鯵に、花穂紫蘇やディルの爽やかな香りと、フランボワーズビネガーのさっぱりとした酸味がよく合います。

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そして待望のパテアンクルート〜!! 
これが食べたかったんです

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鮮魚(平目だったかな?)のポワレは、ホタルイカをソースにしています。
このホタルイカのワタの味が濃厚で魚料理によく合うんですよね。
私も次のホタルイカシーズンでは作りたいと思いました。

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メインは仔羊。
程よい仔羊の香りと、しっとりとした火通しが絶妙。

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最後は、苺とヨーグルト、メレンゲに春菊のソースを合わせたデザート。
春菊のソースだなんて、いかにも上級者向けですが、青い香りはあるけれど、変な苦味はなく、すっきりとした味わいで、驚くほど苺やヨーグルトの味に溶け込んでいます。
こちらのデザートをつくられたパティシエの女性は、間もなくラチュレを卒業なさるとのこと。
これからのご活躍がますます楽しみです。



はじめてのランチがとても素晴らしかったので、同僚と「また行こう!」とその日のうちに再予約(笑)
二度目の訪問は、5月下旬となりました。

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前回毛皮だったディスプレイが、紫陽花のドライフラワーに衣替え。
ホスピタリティを感じます。

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ブラッドマカロンに代わり、シガレットに。
こちらも卵白に似た血の性質を利用したアミューズですね。

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うずらのポーチドエッグが入ったスープ。
ちょっとした小器が可愛らしいです。

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初鰹のタタキ。
生姜風味のジュレと、液体窒素でパウダー状になったガスパチョソースのひんやりとした口当たりが、初夏にぴったり。

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毎回形を変えて登場するパテアンクルート。
芸術的な断面に思わず嘆息。
ホールで食べたい・・・。

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鮎と帆立のムースのパイ包み。
鮎というと苦味のあるワタごと楽しむのは日本では馴染みのある食べ方ですが、今回はあえてワタは使用せず、身の繊細さを味わえる一品にしてみたとのシェフのお話を聞いて、「たしかに、身そのものの味わいを集中して味わったことはなかったかも」と気づかされました。
パイ生地も極力薄くすることで、鮎と帆立の旨味が薄まることなく存分に味わうことができ、魚介料理には定番のバターの香り豊かなソースと一緒に最後の層まで美味しくいただきました。

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今回は猪肉。
脂身が本当に美味しい!

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最後は、パイナップルのデザート。
ジュレの中に閉じ込められたグリーンの雫が美しいです。



ということで、一月の間に2回お伺いしたくなってしまうほど、素晴らしいお料理をいただきました。

美味しいものを楽しめるということはもちろんですが、通いたくなってしまう理由はそれだけではありません。

「あれ?友達だったっけ?」と勘違いしてしまうほどの(笑)、親しみが込められたシェフの優しい笑顔。

客を楽しませてくれるスタッフの方々の料理説明。 

そして、リピーターに同じ料理を出さないという心遣い。

本当に、素敵なレストランだな、と思います。

料理人として遙か先をいく大先輩からたくさんのことを学べる場所。

必ずまたお伺いしたいと思います。


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