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食のサステイナビリティ、料理人としての学びと挑戦

4月から在宅勤務が続いています。

飲食という仕事だからなのか、「今はリモートワークをしている」と話すと、まるで家でのんびりしているかのように受け取られることが多いのですが、リモートなだけで「ワーク」に変わりはないので、もちろん仕事しています・・・笑

私の仕事は、オフィスで働く社員の皆さんに「料理を教える」ということを通して、各々の健康の基盤となる食生活をサポートし、安定した食生活に支えられることで社員がいい仕事をし、会社に利益が還元される・・・というだけではなく、食育という側面を通して個々の食への理解を深め、地元のコミュニティやひいては地球環境に配慮した食生活を送ることで地域に貢献する・・・という壮大な(?)任務を請け負っています。

これ、私が勝手に掲げている目標とかではなく、実際に会社から私のポストに課せられた任務なのです。

外資系企業の中でも、社員の食生活への配慮という点ではかなり進んでいる企業だと思います。

もともと私が公務員を辞めて料理の仕事を選んだのは、単純に料理をすることと食べることが好き!という理由からでした。

昨年まで働いていた職場も、出張料理で個人宅にお伺いし、フルコースを提供するという、比較的裕福な生活をされている方を対象としたお仕事だったので、「いかに美味しいものを提供するか」ということに重きを置いていました。

それが、現在の会社に転職したことにより、求められる仕事に変化がありました。

日本でも少しずつ「サステイナブル」という言葉が広がりつつありますが、それでも、一般の方にすっかり認知されている概念とまでは言えない状態かと思います。

sustainableというのは直訳すると「持続できる」という意味になりますが、地球環境を考慮したときに「環境を壊さずに維持できる」=「地球に優しい」という意味合いで使用されたりしています。

そしてsustainabilityというのは、「持続可能性」つまり、「環境を壊さずに維持できること」=「地球に優しくあること」というようなニュアンス。

食の世界においては、食材の廃棄を減らすことなどだけではなく、「食材の選択」もサステイナビリティに繋がるのです。

どいうことかというと、同じ一食分の食事を作るために、その製造過程で地球環境に負荷のかかる食材とそうでない食材があれば、後者を選ぶことによって、地球環境に配慮することができる・・・というわけです。

また、たとえばシーフードを食べるにあたっても、乱獲によって絶滅の危機に瀕しているような魚介などの摂取を控え、資源豊富な魚介を進んで選択することにより、生態系の保護を図るということも、サステイナブルな食材の選択のひとつといえます。

植物性の食材は、製造過程や消費による地球環境への負荷が動物性の食材に比べて少ないため、「サステイナビリティ」という観点からは積極的な摂取が推奨されています。

野菜料理の摂取は美容や健康という動機付けが一般的かもしれませんが、地球環境への配慮という視点もあるということ。

恥ずかしながら、私は現在の仕事に就くまで、こういった「サステイナブル」「サステイナビリティ」ということに意識を向けたことがありませんでした。

それが、この仕事に就いてから、「サステイナビリティ」に配慮した食材の選択、そしてそれを美味しく食べられる方法を社員の方たちに伝えることによって、地球環境に優しい食生活の提案をするということが求められるようになりました。

この在宅勤務の期間中は、自炊支援のためのレシピや資料などを作成したり、オンラインで料理解説講座を開催したりして仕事をしてきましたが、今回、研修の一環として、ある本が会社から自宅に送られてきました。

それが、こちら。

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PLENTY MORE (Yotam Ottolenghi 著)

野菜にフォーカスした中東料理の本です。

著者はイタリア系ユダヤとドイツ系ユダヤのルーツを持つエルサレム出身のオーナーシェフ兼フードライターです。

野菜にスポットライトを当てた、伝統にとらわれない独創的な料理が人気を博し、ロンドンにデリカテッセンやレストランを経営しながら、様々なベストセラー料理本を執筆してきました。

今回のPLENTY MOREもそのひとつです。

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私はまだこの本を手に取ったばかりで、学ぶのはこれからですが、まずはシェフのことについて知りたいと思い、少し調べてみました。

そこで、こんな記述を見つけました。

He explained that his mission is to "celebrate vegetables or pulses without making them taste like meat, or as complements to meat, but to be what they are. It does no favour to vegetarians, making vegetables second best."

私なりに意訳すると、『彼は、自分の使命を”野菜や豆を肉に似せることでも肉の代わりとすることでもない。それは野菜の素晴らしさを本当に理解していることにはならないし、ベジタリアンを侮辱するようなものだ。私の使命は、野菜を野菜として扱い、その魅力を最大限に引き出した料理にすることなのだ。”と話した。』という感じの解釈になると思います。

私は、この料理哲学に猛烈に共感しました。

いろんなバックグラウンドによりベジタリアンやヴィーガンという選択をする方たちがいて、宗教的な理由、美容的な理由、生物を殺傷することへの抵抗など、様々な価値観に基づいて食を選択しています。

また、「サステイナビリティ」という観点から、肉よりも野菜が推奨されているのも事実です。

ですが、ベジタリアンでもヴィーガンでもない人にとってはことさら、「肉に似せた野菜」「肉の代わりにするための野菜」を食べることにどれだけの意味があるのだろうか・・・と何だか腑に落ちない思いがあったのです。

いくら地球環境が・・・と言われても、ベジタリアンでもヴィーガンでもなければ、「肉に似せて自分を誤魔化すくらいなら、肉を食べるよ」となりませんか?

「本当は肉を食べたいし、大好きだけど、環境のために我慢するよ!」と自分を律することができる人が一体どれだけいるのか・・・。

それよりも、「肉も大好きだけど、この野菜が美味しいから食べたい」と思える料理こそが、私が目指したいものだったのです。

そして、それは菜食主義の方にとっても野菜のあるべき姿だ、とYotamシェフは言っているわけです。

私はものすごーーーーーく納得したというか、もう、「ですよね?!!!」という思いでした(笑)

そんなわけで、まだ手に取ったばかりのこの本ですが、今から読み解くのが本当に楽しみです。

自分から死に物狂いで情報を掴みにいかないと時代に取り残されてしまう料理人の世界の中で、こんな風に会社が率先して見聞を広げるために力を貸してくれる環境は本当に有難いことだと思います。

どんなに素晴らしい本でも、英語で書かれたこんな分厚い本を、仕事でない限り読もうという気にはなれないと思うので・・・そういう意味でも強制的にこのような機会を与えていただいたことに感謝しています(笑)

そして、その結果として「美味しいから食べたい」というモチベーションで選択できるサステイナブルな料理を提案できれば、こんなに素晴らしいことはありません。

自分次第でいくらでも成長できるこの環境にわくわくします。

そして私の料理がどんな風に変化していくのか、自分でも楽しみです。

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